”保育の質向上”を目的として取り入れられた「自由保育」

以前「甘く見れない幼稚園の選び方」でも触れましたが、

日本では幼稚園が始まった19世紀終わりから、「一斉保育」(決められた時間に生徒が同じ活動に取り組む保育)を採用してきました。それが、1988年に保育の質向上を目的として、「子ども中心の保育(自由保育)」(子どもたちが思い思いに自由な活動をする保育)に切り替えられました。

文部科学省の幼児教育指導要領が書き換えられたのは1998年ですから、親世代である私たちの大多数は「一斉保育」の教育を受けていて、当時は自由保育の概念はありませんでしたね。

「自由保育」は海外の幼児教育に影響を受けている?

自由保育が取り入れられた頃から、よく耳にするようになったのが「モンテッソーリ」「シュタイナー」など海外の幼児教育。自由保育の基本コンセプトである「子供中心の保育」は、これら海外の幼児教育にも通じるところがあります。恐らくこのような海外幼児教育の影響を受けて日本でも自由保育が”保育の質向上を目的として”取り入れられたのではないでしょうか。しかし、海外の幼児教育は単なる「子供中心の保育」に留まりません。子供の能力を開花させそれを伸ばすことが目的となっています。

モンテッソーリ

例えばモンテッソーリは、子供の感覚を刺激する”感覚教育法”がベースとなっていますが、考え方としては下記のようです。

「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる。 大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」(日本モンテッソーリ教育綜合研究所

モンテッソーリの幼稚園では子供が自由に活動を選択することから始まります。この点では、我が家の長女が通う自由保育の幼稚園と同じです。自由保育の幼稚園の活動時間は、ほとんどが自分が選択した遊びに集中する時間。長女は大好きな折り紙や工作に1時間以上集中することもよくあるそうで、毎日彼女が自分で作った大量の製作物を嬉しそうに持ち帰ります。一斉保育で育った私としては、このように幼少期から毎日自分の好きな活動に一日中没頭できる環境は、羨ましくも感じます。

しかし、モンテッソーリの教育は、”自由”だけには留まりません。モンテッソーリの教育目標は、

「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学び続ける姿勢を持った人間に育てる」


です。そして、教育を下記の5分野に分けて考えられ、

1. 日常生活の練習
2. 感覚教育
3. 言語教育
4. 算数教育
5. 文化教育

各プログラムも体系化されているそうです。

シュタイナー

シュタイナー教育とは、ルドルフ・シュタイナーが1919年にドイツで始めた教育実践です。海外ではヴァルドルフ教育と呼ばれています。シュタイナー教育は、自由教育の象徴的存在とも捉えられており、日本では詰め込み型の知識重視のお受験教育に対する代替として、支持を集めているようです。

シュタイナー教育の目的は、下記となります。

「子供が”自由な自己決定”を行うことができる人間となるためのサポート」(Wikipedia

また、授業内容としては、

子どもの体と心の発達観に基づく12年間の体系的なカリキュラムを持っています。知性だけでない子どもの心や体、精神性をも含めた全人教育を目指し、そのためには教育そのものが芸術行為であることが大切だと考えています。(「学校法人シュタイナー学園」より)

とあり、「芸術行為を通しての学び」が土台となっています。ここは後述するレッジョ・エミリアにも通じるところがありますね。

さらに、人間の特質を年齢によって7年毎の3期に分け(0-7歳、8-14歳、15-21歳)、その発達特徴を理解した上でプログラムを作ります。そして人間のタイプを「4つの気質」に分け、それぞれの生徒に異なるアプローチをするのも特徴だそうです。

レッジョ・エミリア

「TIME誌」で”世界の最高水準の学校TOP100″にも選ばれている「レッジョ・エミリア」。レッジョ・エミリアは、イタリアで生まれた教育方法。子どもの意思や個性を尊重し、子どもが持つ潜在能力、表現力、コミュニケーション能力、自ら考える力などを養うことを目的としています。

以前のMutsumiのブログ「レッジョ・エミリア アプローチって何?② 」にもありますが、子どもが100人いれば100通りの考えが、そして100通りの表現の仕方があると考えます。

そして授業内容は、大人が決めた項目を学習する典型的なカリキュラムではなく、子ども自身がどう考えるかを引き出すカリキュラム。そのため、プロジェクトも先生ではなく子供たちが自由に決めます。

のブログをお読みください

レッジョ・エミリア アプローチって何?③ ”グループワークを重視”
レッジョ・エミリア アプローチって何?④ ”本物の素材を使うアートプログラム”

日本の自由保育では補えない海外幼児教育の質の高さ

このように見てみると、日本の自由保育も「子供中心の保育」という点では、モンテッソーリ、シュタイナー、レッジョ・エミリアと同じです。しかし、授業の内容の濃さというと、残念ながらこれら海外の幼児教育には全く及びません。日本の子供たちの能力を開花させ未来の可能性を開くためには、こうした海外の幼児教育を日本にどんどん取り入れていく必要があると思います。

Yoshimi Ueda // Tokyo

上田佳美/東京

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