2017.04.20
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2017.05.23
アメリカで活躍する日本人レッジョ・エミリアの先生〜前編
Category レッジョ・エミリア アプローチ
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日本人のレッジョ教育者に出会う
昨年ロサンゼルスでNAREA(北米レッジョ・エミリア連盟)のカンファレンスが開催されました。200名以上の教育者が全米から集まる大きな会議です。今回のパネリストはイタリアレッジョエミリアからアメリアガンベッティーと元アトリエスタのレラガンディーニ。その他にレッジョを取り入れているプリスクールの園長が2名。パネリスト達の発表後は、ロサンゼルスの代表的なレッジョ・エミリアアプローチのプリスクール4校の見学でした。私と2歳の息子はこのうちの1校のプログラムに参加しています。私の当日の役目は息子のクラスルームの案内。たくさんのレッジョの先生方をお迎えしました。そこにいらしたのが久弥子(Kumiko)先生。名札が日本人名だったのですかさず話かけました。私もレッジョに関するワークショップなどに多々参加していますが、日本人と会うことはとても珍しいのです。
なんと久弥子先生はアメリカで10年以上もレッジョ・エミリアアプローチを実践されているとのこと。長年勤務された学校も、ロサンゼルスのレッジョ・エミリア教育を代表するプリスクールです。イタリアのレッジョ・エミリアでも研修を受けられています。レッジョアプローチに対する理解、そして日本人でここまでの実践を積まれている方は他にいらっしゃらないのでしょうか。
後日個別にお会いして、お話を伺うことができました。今回写真をお借りした、久弥子先生のブログ”南カリフォルニアでのreggio emilia approachの関わり”では、インスピレーション溢れるお話や素敵な写真もたくさん見れます。
レッジョ・エミリアアプローチへの深い理解と長年の実践を持つ久弥子先生
お名前 加藤 久弥子
居住地 南カリフォルニア
経 歴 聖心女子専門学校保育科卒業後、都内私立幼稚園に3年間勤務した後にアメリカサンタモニカに留学。2001年のこどもたちの100の言葉展をワタリウム美術館にて鑑賞した際にレッジョエミリアアプローチと出会い、その教育方針に興味を持ち始める。2003年にサンタモニカ市立カレッジ幼児教育学科卒業後、レッジョエミリアアプローチを取り入れてる保育園New School Westでインターンを経験。2006年にレッジョエミリアアプローチを取り入れている保育園The Growing Placeに勤務。イタリアレッジョエミリア市、アメリカポートランド市、アメリカツーサン市、ロサンゼルス市、サンタモニカ市などの園の見学、講習会並びに、研修会等に多々出席。在勤中にナショナル大学幼児教育科卒業。現在はカリフォルニア州アーバイン市に在住し、The Community Seedlingsにてアトエリスタとして働きながら、レッジョエミリアアプローチを広めるために保育園、幼稚園にてコンサルタントを行ったり勉強会を開催。
Q:幼児教育をお仕事にされたきっかけは?
子どもが好きだったからです。小学〜高校時代は夏や冬休み等にキャンプに参加していました。そこで小さな子ども達の世話をしたりスキーを教えていました。何よりも子ども達が好きという思いから、幼児教育に進みたいと思うようになりました。
Q:数ある幼児教育の中でレッジョ・エミリアアプローチに惹かれた理由は?
2001年の「こどもたちの100の言葉展」を見て衝撃を受けました。これは一体何だろう??と。強く惹かれるものがあり、もっと知りたいと思いました。その後レッジョ・エミリアアプローチの勉強をしたり色々な園を見学する中で、「子どもたちの100の言葉」のメッセージに強く共感するようになりました。
レッジョでは、プロジェクトを進めるにあたり、子ども達と一緒にリサーチしていくことが面白いです。思ってもいなかった展開に発展したり、予想外のことを発見する驚き、そしてその発見に導くことがとても面白い。また、リサーチが先生一人で行うのではなく、ペタゴジスタ・アトリエスタと協力して行っていくユニークさも素敵だと思います。
久弥子先生の現在勤務されるプリスクール。こちらのブログで紹介されています。
Q:レッジョの先生をされていてやり甲斐を感じることは?
やはり子どもと一緒に新しい発見をしていく面白さですかね。予想外のことが新しい発見につながっていくんです。
ある年、グラビティ(重力)・モーション(動き〉・スピードに興味があるクラスがいました。ガター(パイプを半分に切ったような溝〉2本を斜めに置いてそれぞれボールを入れて、どちらが早く進むかを観察していました。目で見ているだけではどちらが早いかが分かりづらく、ボールに絵の具を付けてみることにしました。ガターの先には紙も置いて、先についた方がどちらか分かるようにしました。しかし、一つのスポンジのボールは絵の具が吸収されすぎてボールが動かなくなってしまいました。そこで、こちらからは何も言っていないのに、ボールを早く進めるために息を吹きかける子ども。追い風が物体を推し進めることをこうして自分自身で発見したようです。その後アトリエで、私はマーブルペインティングをセットアップしました。でも子ども達にはやり方を教えない。絵の具とビー玉が入ったトレイを目の前に「どうやるんだろうね?」と言う私に、子ども達は「分からないよ」「できないよ」。私は「でも外ではできたよね?(ボールが動いたよね)」。子ども達は「でも外では(ガターが)斜めだったもん」。私「斜めだったんだ?」。そこで子ども達はひらめいたようです「あ、斜めにすればいいんだ!」。
このように、子ども達の発見を導くことが面白いんです。子ども達を観察して、子ども達の知識度を次のレベルに引き上げるようなマテリアルのセットアップ、リサーチを常に行っています。
Kumiko先生によるナチュラルマテリアルのセットアップと、子ども達が先生が用意したマテリアルで制作をする様子。アート制作を通し、算数や言語の学習にもつながるのです。久弥子先生のブログ ”アトリエでは何が学べるの?” で紹介されています。
先生のお話を聞けば聞くほど、こんな先生に見てもらえるなんてとても幸せな子ども達!と思わずにいられませんでした。Kumiko先生はアートに造詣が深く、アトリエスタ(美術専門教師)を勤めてらしゃいます。レッジョ・エミリアアプローチのことを「アート」ばかりやっている学校とイメージを持たれる方もいると思います。しかしレッジョを知れば知るほど、アートだけではないとても奥深い学びが存在していることが分かります。久弥子先生は「アートは子どもの考えや表現をサポートするツール」とおっしゃいます。その話は後編でお伝えします。
Mutsumi Paterson // Los Angeles
ムツミ・パタソン(ロサンゼルス)
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