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2024.06.04

レッジョ・アプローチとモンテッソーリの違い

Category レッジョ・エミリア アプローチ

Tags 幼児教育レッジョ・エミリア子どもモンテッソーリ

レッジョ・アプローチとモンテッソーリ:幼児教育法の違いを徹底比較

大事なお子さんをいざ幼稚園や保育園に入れるとき、どのような園が自分の子どもには合っているのか、とても悩みますよね。

現在の日本においては、「〇〇式幼児教育」などさまざまなアプローチが混在しており、保護者にとってそれぞれの内容を理解するのも一苦労なはず。

そこで今回の記事では、日本に限らず海外でも多くのスクールで取り入れられている「モンテッソーリ」と「レッジョ・アプローチ」の2つの代表的な幼児教育法にフォーカスし、それぞれの概要だけでなく、メリットや特徴をわかりやすくご紹介します。

モンテッソーリとは?

モンテッソーリメソッドは、1907年、当時小児科医だったマリア・モンテッソーリによってイタリアで始まりました。モンテッソーリの学校は通常、縦割りで子どもを分け、さまざまな年齢同士の交流を通して様々なことを学ぶと考えています。

モンテッソーリといえば、色とりどりの「教具」。これらはモンテッソーリの感覚教育法をベースに作られたもので、教具の形、大きさはもちろん、手触り、重さ、材質にまでこだわり、子供たちの繊細な五感をやわらかく刺激するよう精密に作られています。

教具を含めたモンテッソーリの教室は、静かで、感覚的な経験(におい、見るもの、音、触るものとの相互作用)ができるよう整えられています。先生は子ども達の様子を観察、指導し、生徒が成長するにつれてより独立した学習に移行するように促します。

レッジョ・アプローチとは?

レッジョ・アプローチの発祥もイタリアで、モンテッソーリメソッドが生まれてから約50年後に始まりました。 ”レッジョ”という名前は創業者ローリス・マラグッツィの故郷の名前で、その町全体がレッジョ・エミリアアプローチの教育モデルになっています。レッジョ・エミリアにある公立の学校はレッジョ・エミリアアプローチを採用しているのです。

レッジョ・アプローチとは、子ども達の好奇心を引き出し共に探究することで、その子本来の才能を育むイタリア発祥の教育法です。世界最高峰の幼児教育の1つとして、GoogleやDisneyの米国本社の社内幼稚園でも採用されています。

従来の教育との違いは、子どもが「自ら考えて行動する」主体性を育むこと。1つのテーマに長期的に取り組んだり、身近な自然に触れ、自由な発想で表現するなど、さまざまな形で個々の可能性を伸ばします。

モンテッソーリと共通して、レッジョ・アプローチの教室の環境は静かで美しく開けた環境です。子ども達には無限の多種多様な表現方法や学びの方法があると信じ、子ども達それぞれの個性を大切にしています。

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▲レッジョ・アプローチを行う園の教室の様子

二つの幼児教育法には共通点がありますが、レッジョ・アプローチはモンテッソーリメソッドほど決まった公式がありません。先生と子どもが一緒にカリキュラムを作っていく、常に子どもの持つ興味によりカリキュラムが流動していくという特色があります。たとえ同じ年齢のクラスであっても、毎年同じカリキュラムが繰り返されることはないのです。

レッジョ・アプローチとモンテッソーリの違い

1.身に付く力の違い

レッジョ・アプローチとモンテッソーリの幼稚園では、おもちゃの使い方一つとっても違いがあり、それにより子どもたちが身につける力も異なってきます。

例えば、モンテッソーリの幼稚園には、一種類のおもちゃ(教具)を複数置くことはありません。おもちゃ(教具)は一つだけ置いて、みんなで共有します。使いたい人が何人かいたら、子ども達は先生が用意している「予約表」に名前を書き、自分の順番が来るまで待ちます。このようなシステムを子どもたちは学び、実践することで、”自制心”を養っていきます。

一方レッジョ・アプローチにおいても、おもちゃは子どもたちみんなで共有します。みんなが一つのおもちゃを使いたいとき、取り合いになるような喧嘩になった場合でも、それを大事な学びとして捉えます。子ども同士でまずは話し合い、どのような順番で使うか決めることを先生がサポートします。それでも上手くいかず純粋な喧嘩に発展するときは、先生が間に入り、両者の考えを聞きます。先生がファシリテーターのように存在し、子ども達同士で「ルール」を決めることをサポートするのです。

そうやって、子どもが自制心を抑えられなくなった時は、先生も根気よく子ども達と同じ立場で冷静に話し合うことで、子ども達は「どう自分の気持ちをコントロールすればよいか」を対話を通して気づいていくのです。

2つの違いをまとめると下記のようになります。

●モンテッソーリ
「予約表」の使い方を知り、実践する ⇨ 自制心、理解力
●レッジョ・アプローチ
「おもちゃを使うときの”ルール”」をみんなで話し合い決める
⇨コミュニケーション能力・問題解決能力

おもちゃの使い方を例に今回は違いをご紹介しましたが、それ以外の数々の場面においてもレッジョ・アプローチとモンテッソーリでは子どもたちへのアプローチが異なる場合があります。数年を通してスクールに通う場合は、その過程で子どもに身につけてほしい力を見据えて選んでみるのも手かもしれません。

2.マテリアル(お道具)

モンテッソーリの教具は全て、「一つの目的のため」に作られています。そのため正しい使い方も一通り。子ども達は、意図的に組み込まれた認知的な能力を、教具を通して身に付けていきます。いわば、先生側が期待することを、子ども達は学んでいくのです。このような教具(マテリアル)は、「最終形が既に決まっている」という意味の「クローズド・エンド・マテリアル」と呼ばれています。子供の発達段階に合わせたものを先生が提供するため、これらを使用することで手先が器用になったり、丁寧に何かを作業することが得意になるとも言われています。

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それに対しレッジョ・アプローチでは、子ども達の創造力によっていくらでも形を変え、使い方が制限されない粘土やブロックなどのマテリアルを使用します。これらは、「オープン・エンド・マテリアル」と呼ばれ、先生たちは観察を通して子どもの得意や苦手を把握し、適切なものを提供します。ブロックよりも粘土の方が好き!という子どもであれば、好きな粘土の方が集中でき、アイディアも色々と湧いてきます。自ら思考したり想像したりできる環境を与えることによって、子どもの創造力やアイディアの可能性を広げます。

3.先生に求められるスキル

モンテッソーリの先生は、子どもを尊重しながら見守り、適切なタイミングでサポートをします。その点はレッジョ・アプローチと共通していますが、モンテッソーリの先生が意識するのは、「いかにその子がその教具で学ぶべきことを学べるか」ということ。正しい教具の使い方をまずは先生がゆっくりと子どもに見せて”提示”をし、子どもたちを導いていきます。

それに対し、レッジョ・アプローチの先生は、子ども一人ひとりをよく知ることが重要だと考えているため、頭の中にあるアイディアを引き出す対話を重ねていきます。また、一人ひとりに合った「チャレンジ」を与えることも重要視します。

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▲レッジョ・アプローチを取り入れたKodomo Edu International Schoolでの様子

例えば、いつもお友達のやることに付いていく子がいれば、適切なタイミングでその子に小さいグループのリーダーとなる役回りを先生から与えます。今まで好きなお友達の真似をしていた子がリーダーになることで、他のお友達をどうリードしていくか学ぶのです。マテリアルから学べる認知的な能力だけでなく、このようなソーシャルスキルも学べるのがレッジョ・アプローチです。

4.伝統を守るV.S.進化し続ける

モンテッソーリは100年以上前に、マリア・モンテッソーリによって作られました。教具やその教え方などは世界共通で決まっており、今まで100年以上その方法を変えず守られてきた教育方法です。

それに対してレッジョ・アプローチは、「時代の変化によって教育も変化すべき」という思想から始まっているため、時代の変化や文化の違いに合わせて進化している教育方法です。

レッジョ・アプローチの先生は、常に新しい事を学び、アプローチを進化させることを心がけているため、当園では勉強熱心で創造力に溢れた先生が多いと感じます。

レッジョ・アプローチは意思のある子に育つ

最後に、レッジョ・アプローチを行うKodomo Edu International Schoolを運営する中で感じたことをお伝えします。

まずは、「自分の”意志”のある子」 が多いということです。

例えば、モンテッソーリの園では、「ぞうきんを絞る」、「紐を3つ編みする」、「ピッチャーに入った豆をもう一つのピッチャーに入れる」という活動があります。

レッジョ・アプローチの園においても同じような作業はしますが、それはプロジェクトという目的のための一つの過程です。みんなで作業をして汚れたアトリエを綺麗にするために「ぞうきんを絞る」。園の玄関を素敵に飾るために「紐を3つ編みする」。クラスメイトの誕生日に香り付きのカラフルな粘土を作るために、「水と小麦粉をピッチャーで測ってボールに入れる」など。

そして、そうした活動は全て子ども達が話し合って”やりたい!”と決めます。なので、全ての活動に「子ども達の意志」があるのです。

当園の生徒たちも、長く通う子ほど、「私は、こうしたい」「私はこう思う」と明確な意志を持って、先生やお友達と話し合いながら、積極的に全ての活動に取り組んでいます。年長児は特に、責任感が強く、異年齢混合クラスの中でプロジェクトをリードしていくので、自然と物事への積極性や自主性が養われているようです。

二つの幼児教育には共通点もいくつかありますが、比較をしてみると子どもたちがどのような力を身につけるのか大きく異なることがわかります。幼稚園・保育園選びの際には、園の教育方法の特徴と合わせて、子どもの性格やどのような力を養ってほしいかをベースに決めてみると良いかもしれません。


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